『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち』を語る上で、絶対に避けて通れない話題があります。それは、主人公の親友であり、物語序盤の頼れる兄貴分「キーファ」の離脱です。
多くのプレイヤーに衝撃を与え、ネット上では「種泥棒」という不名誉なあだ名まで定着してしまった彼の退場劇。しかし、大人になった今改めて読み解くと、彼の行動には単なる「色ボケ」では片付けられない、深い葛藤と決意があったことが分かります。
この記事では、キーファが離脱した本当の理由を、物語上の背景とゲームシステムの両面から徹底解説します。また、リメイク版で明らかになった「その後」の真実や、これからプレイする人が注意すべきポイントについても詳しく紹介していきます。

【ドラクエ7】キーファが離脱した「物語上の理由」とは

まず、最も基本的な疑問である「なぜキーファはパーティーを抜けたのか」について、ストーリーの流れに沿って解説します。結論から言えば、彼の離脱理由は「愛する女性(ライラ)と共に生きるため」ですが、それだけではありません。そこには、彼が抱え続けていた「自分の居場所探し」というテーマが深く関わっています。
グランエスタード王子の苦悩
キーファは、平和な島グランエスタードの王子として登場します。しかし、彼は王族としての堅苦しい生活や、敷かれたレールの上を歩む人生に強い退屈と反発を感じていました。
冒険の始まりにおいて、彼は主人公(アルス)を強引に誘い出し、未知の世界への扉を開きます。この行動の根底にあったのは、単なる好奇心以上に「自分は何者なのか」「自分にしかできないことは何なのか」を見つけたいという、切実な渇望でした。
ユバール族との出会いとライラへの恋
物語中盤、主人公たちは「神の復活」を使命として旅をする移動民族「ユバール族」の時代(過去)を訪れます。そこでキーファは、踊り子の少女ライラと出会います。
キーファはライラの美しさだけでなく、一族の掟に従い、使命のために生きる彼女のひたむきな姿に惹かれていきます。同時に、ユバール族の屈強な守り手たちが命懸けで一族を守る姿を見て、彼は初めて「自分の力を捧げたいと思える対象」を見つけるのです。
「王子」ではなく「一人の男」として生きる決断
ユバール族の休息地でのイベントは、キーファの心境変化を決定づける重要なシーンです。彼は主人公に対し、以下のような胸の内を明かします。
「オレは今まで、王子という立場に縛られてきた。でも、ここでは誰もオレを王子として扱わない。ただのキーファとして見てくれる」
最終的にキーファは、復活の儀式におけるライラのパートナーとして選ばれます。そして、儀式が終わった後、彼は主人公たちと共に元の時代へ帰ることを拒否し、「ライラを守り、ユバールの一員としてこの時代で生きる」ことを宣言しました。
これが、彼が離脱した物語上の理由です。それは衝動的な恋であると同時に、彼が長い間探し求めていた「生きる目的」を、ようやく見つけた瞬間でもありました。
なぜキーファは「種泥棒」と呼ばれるのか?

物語としては「自立と決断のドラマ」ですが、プレイヤー視点、特にゲームシステム視点で見ると、これはとてつもない悲劇でした。彼が「種泥棒」という蔑称で呼ばれるようになった背景には、ドラクエ7特有のゲームバランスと仕様が関係しています。
序盤最強のアタッカーという罠
物語序盤において、キーファのステータスはずば抜けて高く設定されています。
- HPと守備力が高く、壁役になれる
- 攻撃力が最も高く、主力アタッカーになる
- 強力な特技「火炎斬り」などを早期に習得する
主人公やマリベルがまだひ弱な時期において、キーファはまさに「頼れる兄貴」です。そのため、多くのプレイヤーは貴重なステータスアップアイテムである「ちからのたね」や「命のきのみ」を、迷わずキーファに投与してしまいました。
何の前触れもない「永久離脱」
ドラクエシリーズにおいて、仲間の一時的な離脱は珍しくありません。しかし、キーファの離脱は以下の点で凶悪でした。
- 二度と戻ってこない(永久離脱)
- 離脱の直前まで明確な警告がない
- レベルアップや種で強化したステータスが無駄になる
特にPlayStation版(オリジナル版)では、彼が装備していた高価な武器や防具、持たせていたアイテムを全て持ったまま離脱してしまう仕様でした(※袋に入っているものは無事)。
「世界を救うために一緒に頑張ろう」と誓い合い、貴重な種を与えて育て上げた親友が、突然「女と過去に残るから装備ごとバイバイ」と言い放つ。この喪失感と理不尽さが、20年以上経っても消えない「種泥棒」という恨み節を生んだのです。
リメイク版で明かされたキーファの「その後」と救済
あまりにもプレイヤーへの衝撃が大きすぎたためか、ニンテンドー3DSやスマホ版のリメイクでは、キーファに関する大幅な追加シナリオや救済措置が導入されました。これにより、彼の離脱に対する解釈は大きく変わりつつあります。
追加エピソード:石版に残されたメッセージ
リメイク版では、クリア後の追加コンテンツなどでキーファの「その後」を垣間見ることができます。彼は過去の世界でユバール族の一員として認められるため、伝説の魔物とたった一人で戦うという試練に挑んでいました。
その戦いの最中、未来から干渉する主人公たちの助けを得て、彼は勝利します。そして、直接言葉を交わすことはできないものの、主人公たちが助けてくれたことを悟り、未来の親友へ向けて石版にメッセージを残しました。
「どんなにはなれていても オレたちは 友達だよな!」
このメッセージを発見した時、多くのプレイヤーの溜飲が下がりました。彼は決して主人公たちを捨てたわけではなく、別の場所、別の時間で、友を想いながら戦っていたことが判明したのです。
キーファの血脈は「アイラ」へ
さらに物語終盤、現代のユバール族の末裔として登場する女性キャラクター「アイラ」。彼女がキーファの直系の子孫であることが、リメイク版ではより明確に描写されています。
キーファが過去に残り、ライラと結ばれたからこそ、その血は脈々と受け継がれ、数百年後の未来で「アイラ」として主人公の前に現れました。そしてアイラは、かつてキーファが果たせなかった「主人公と共に魔王を倒す」という役割を果たします。
つまり、キーファの離脱は「戦力の損失」ではなく、「未来の世界を救うための種まき」だったと言えるのです。そう考えると、「種泥棒」という言葉も、皮肉なほど的を射た「希望の種をまいた男」という意味に変わるかもしれません。
これからプレイする人へ:キーファ離脱前の注意点

物語の深さを理解したとしても、ゲームプレイ上の損失は避けたいものです。これからドラクエ7をプレイする方、あるいは再プレイする方に向けて、実用的な注意点をまとめました。
1. 「種」は絶対にキーファに使わない
これが鉄則です。「ちからのたね」「命のきのみ」などのステータスアップアイテムは、主人公か、後半まで確実に残るガボ(またはメルビン、アイラ)のために温存してください。キーファは素のステータスだけで十分に強力です。
2. 装備品を剥ぎ取るタイミング
ユバール族の休息地でイベントが進むと、キーファがいよいよ離脱します。以下のタイミングに注意してください。
- 予兆: 「金色の女神像」に関するイベントが進行し、ライラとキーファが良い雰囲気になり始めたら警戒してください。
- 最終ライン: 儀式が始まる直前、あるいはキーファが「オレはここに残る」と言い出す直前の自由行動時に、彼の装備をすべて外し、持ち物もすべて「ふくろ」に入れてください。
※リメイク版では、離脱時に装備品などが自動的に「ふくろ」に戻る仕様に変更されている場合もありますが、万全を期すために手動で外しておくことを強くおすすめします。
3. レベル上げはほどほどに
キーファはいずれ離脱するため、彼に経験値を集中させても後半には繋がりません。ダーマ神殿での転職イベントより前に離脱するため、彼を育成する楽しみ(職業システム)も味わえません。序盤の攻略に必要な最低限のレベルがあれば十分です。
まとめ:キーファはなぜ離脱したのか
キーファの離脱理由について、様々な角度から解説してきました。
- 物語: 王子の地位を捨て、一人の男として生きる場所(ユバール)と愛する人(ライラ)を見つけたため。
- システム: プレイヤーに「別れの喪失感」を強烈に与え、自立を促すゲームデザインのため。
- その後: 過去の世界で一族を守り抜き、その血を未来の仲間(アイラ)へと繋ぐため。
当時、突然の別れに「裏切り者」と感じた方も多いでしょう。しかし、ドラクエ7のサブタイトル『エデンの戦士たち』が示す通り、この物語は「守られた子供時代(エデン)」からの決別と自立を描いています。
キーファは主人公よりも一足先にエデンを出て、自分の足で歩き出しました。その決断は痛みを伴うものでしたが、結果として数百年後の世界を救うことに繋がりました。
もし、これからドラクエ7をプレイする機会があれば、彼を単なる「種泥棒」として見るのではなく、時を超えて友情を繋いだ一人の不器用な青年の物語として、その生き様を見届けてあげてください。きっと、エンディングで見る石版のメッセージが、当時とは違った重みを持って胸に響くはずです。

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